地下鉄サリン事件の実行犯である豊田さんの同級生である著者が書く、なぜ同級生は地下鉄サリン事件の実行犯になってしまったのか。というドキュメンタリー。いや、ミステリー?そんな、分類に迷ってしまう感じの本。
地下鉄サリン事件は、当時、化学系の研究室に属していた私にとっても、そして、その研究室の先生にとっても、非常にショッキングな出来事だった。事件の詳細というか、オウム真理教の詳細がどんどん出てくるにつれ、オウム真理教に入信し出家信者となりサリンを作るにまで至った彼らと、そういったことなしに大学で化学の研究をしている僕らとの差がいったいどこにあって、どうして違う結果になっているのか、よくわからなかったからだ。
当時から「エリートである彼らがなぜ」といった方向での報道は多数あった。彼らをエリートというのなら、国立大学の大学院に通っていた私自身も「エリート」であり、自分自身、近い将来そういった組織に身を置いてしまうのではないか、向こう側とこっち側ではなにが違うのか。理学部のように、とくに「役立つ」研究と言うよりは、「それが楽しかったから」やっている研究をやっている人間からすると、きっと真理を求める方法を間違ってしまっただけだ。そんな風に思えて仕方がなかった
なぜ、彼らは、向こう側に行ってしまったのか。その答えが、この本にあるように思う。そして、こんな悲惨な事件をを二度と起こさないためにも、死刑とするのではなく、語り部として、なにが起きたのか、しっかり、語ってもらわなければならない。
そうそう、自爆テロと、神風特攻隊が、どこか似ていると、ずーっと、思っていた。どうやら、筆者も同じことを考えているらしい。同じことを考えているひとが居て、なんとなく、安心した。
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